”たとえばね、僕の描く女が無機質だとか、色気がないとか、マネキンみたいだとかいろいろ言われるんだけど、僕ね、最近ふと思いついたんだけれど、どうも僕自身あんまり画を描こうとしてるんじゃないと思うの。僕は大体、もともと画が本職じゃないしね、デッサンなんかもやったことないし、まったく自己流の画でしょ。だから、それは表現の手段としてね、たまたまお話をつくる道具として画らしきものは描いていますけど、僕にとってあれは画じゃないんじゃないかと、本当に最近思いだしたんです。
じゃあ何かっていうとね、象形文字みたいなものじゃないかと思う。僕の画っていうのは、驚くと目がまるくなるし、起ると必ずヒゲオヤジみたいに目のところにシワが寄るし、顔がとびだすし。(笑)
そう、パターンがあるのね。つまり、ひとつの記号なんだと思う。で、このパターンとこのパターンとこのパターンを組み合わせると、ひとつのまとまった画らしきものができる。その組み合わせのパターンっていうのは、僕の頭のなかに何百通りってあるわけです。だけどそれは純粋の貝がじゃなくてね、非常に省略しきったひとつの記号なのだと思う。
(中略)
つまり、僕にとってのまんがというのは表現手段の符牒にしかすぎなくて、実際には僕は画を描いているんじゃなくて、ある特殊な文字で話を書いているんじゃないかという気がする。”

(手塚治インタビュー「珈琲と紅茶で深夜まで‥‥」)
大塚英志 「アトムの命題」より

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